嵐の海
初めてあなたと出会った
荒れ狂う海の中 あなたは気を失っていた
このままでは死んでしまう
あなたを抱えて必死で泳いだ
どうかこの人を あの岸まで
たどり着いた砂浜
まだ息をしないあなた
神様どうかこの人を助けて下さい
薄っすらと目を覚ます
良かった 生きていた
目を開けようとするあなた
ばれてはいけない
目が開かれた でも意識ははっきりしてないよう
私を見つめる瞳
声をかけたい
でもそれは許されない
ねぇ あなたはどんな声をしているの?
あなたの声を私に聞かせて
ガサッ
人が来た
私のことを忘れないで 私を見つけ出して
あなたの声が聞けぬまま 私は海へ帰る
でもやっぱりあなたが気になる
岩陰に隠れてあなたを見つめていた
女性が近づいてくる
待って その人を連れて行かないで
消えていく人影
せっかくあなたに出会えたのに
あれからどれくらい時間が経っただろうか
あなたと出会ってから一秒がとても長く感じる
もう一度あなたに会いたい
あなたの声が聞きたい
あなたに触れたい
『あなたの願いを叶えましょう』
それは悪魔の囁きだった いや私にとっては天使の囁きだった
私をあの人と同じ人間にしてほしい
『それではあなたを人間にする代わりにあなたのそのきれいな声を頂こう』
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