私の声
声がなくては歌えない
でもあなたと同じ人間になれるなら 私の歌はいらない
『しかし条件がある あなたは一週間以内にその男と結ばれなければ 泡になってしまうよ』
不安はない だってあなたに会えるのだから
砂浜に上がる 苦しくはない
歩いている 自分の足で
ガサッ
誰か来た 隠れないと
見覚えのある顔 あなたは愛しい人
目が合った 覚えているだろうか
近づいてくる 高鳴る鼓動
私がわかる?
声がでない あなたに話しかけることが出来ない
するとあなたは私に話しかけてくれた
やっと聞けたあなたの声
どれほど嬉しかったことか
あなたは私を側においてくれた
でも、それは婚約者としてではなく 家族として・・・・
あなたには愛しい人がいる
それは私ではなかった
彼女はとても綺麗で優しかった
私は二人といると楽しかった
でも、同時にとても寂しくて、いつも孤独と一緒だった
ある日、あなたはとても嬉しそうに彼女との婚約を告げてきた
その瞬間私の中で何かが壊れた
ある夜、姉たちが銀色の鋭い物を持ってきた
『それであの人を殺しなさい。そうすれば、あなたは泡にならずにすむわ』
姉たちが必死に何かを訴えていた でも空っぽの私には何も考えることはできなかった
気付いたらあなたのところにいた
私の手には銀色の鋭い物が・・・・
あなたを殺せば・・・
突然手に落ちてきた雫
雨漏り?
違う、これは私の雫だ
頭の中にあなたの幸せそうな顔が浮かんできた
音をたてて床に落ちる鋭く尖った物
できない・・・私には・・・
あなたがこの世界から居なくなるなんて・・・・・
考えるだけで目の前が真っ暗になった
あなたが幸せなら私も幸せ
あなたが楽しいなら私も楽しい
あなたが笑えば私も笑う
そんな日々がとても楽しかった 嬉しかった 幸せだった
あなたと会えてよかった
あなたを愛することができて本当によかった
ありがとう
愛しい人
ありがとう
私は今泡となり
永久に眠る――――――――
宝物 ホーム