〜3〜

どうして俺はこんな顔に生まれてきたのだろう。

どうしてもっと男らしい顔に生まれてこなかったんだ!

なんでよりにもよって母さんの方にそっくりな顔なんだよ!

葉琉は鏡に映った自分の顔を見ながらブツブツ独り言を言っていた。

「お嬢ちゃん、ここは男子トイレだよ!」

葉琉が横を見ると飛鳥が立っていた。葉琉は思いっきり飛鳥を睨んだ。

「おいおい、そんなに見つめないでくれよう。照れるだろ。」

「・・・・・・・」

はるは、呆れ顔でため息を吐くとさっさと出て行った。

飛鳥の奴、頭のネジが全部取れてんじゃねぇの?

葉琉は無意識のうちに、歩くペースが早くなっていた。

「葉琉〜、待てよ〜!」

葉琉が後ろを振り向くと飛鳥が追っかけてきている。うわ、最悪!

すると、周りの人たちがいっせいに葉琉の方を見てきた。

葉琉は、恥ずかしさのあまりカァ〜ッと顔が真っ赤に染まった。

自分でもそれが分かるほどだった。

なんでさっきから追っかけてきて、しかも、大声で俺の名前を呼ぶんだよ!

葉琉は、飛鳥の行動が全く理解できなかった。

葉琉は、そこに立って居られなくなり、全速力で逃げた。

それを見た飛鳥は、何を思ったのか、何やら不気味な笑みを浮かべながら全速力で走ってくる。

もう、勘弁してくれよ!

お前といると恥ずかしいから逃げているのにこれじゃあ意味が無いじゃないか!

ちなみに、葉琉と飛鳥の体育の成績は5。

足の速さは、高校になって急に葉琉の足が遅くなったため、今は飛鳥の方が速い。

さらに、葉琉は、体力も前より低下してきている。

なので、葉琉と飛鳥の距離はだんだん近づいてきた。

やばい!追いつかれる!

すると、目の前に屋上へ続く階段が見えた。

葉琉はその階段を駆け上がり屋上へ上った。

続けて飛鳥も屋上へ上ってきた。葉琉は、息切れしながらも飛鳥に問いかけた。

「ハァハァ・・・・・何で・・・追っかけて・・・来るんだよ!」

葉琉の声は小さく、息切れしているせいでとぎれとぎれだった。

しかし、飛鳥は息切れなど全くしていない。

これも、俺の体力が減ったからなのか?

「何でって聞かれてもねぇ、ただ葉琉が逃げたから追っかけただけなんだけど・・」

「そ、そんな・・け??」

「うん、そんなけ。てか、葉琉、またお前体力減ってないか?だから、いつも走れって言ってるだろう。」

「走ってるよ!毎日!でも、体力が減っていくばっかなんだよ!」

「・・・・・・・・・」

??どうしたんだ?急に。黙り込んじゃって。

葉琉がそう聞こうとした瞬間、チャイムが鳴った。

すると、飛鳥が口を開いた。

「教室まで戻れるか?葉琉。」

「・・・・・ちょっと無理かも。俺はこの時間の授業サボるわ。

だから飛鳥先に行ってていいぞ!」

飛鳥は葉琉を心配そうな目で見てきた。

「葉琉がサボるなら俺もサボる!」

「はぁ?何言ってんの?お前欠点取っただろう。行けよ!」

「やだね。お前が受けねえなら、俺も受けねぇ!」

飛鳥は、その場に座り込んだ。たくっ、こいつは。まあいっか。

「今日だけだぞ!」

葉琉は、飛鳥にそう言うと、その場に寝転んだ。




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