〜2〜
「はぁ・・・・ついたぁ」
葉琉は、休む暇なく、急いで教室に向かった。
どうして今日に限って・・・もう最悪だ!
そう思うのも無理はない。なぜなら今日は、席替えの日なのだ
葉琉のクラスは早く来た者から順に好きな席を取って良い事になっている。そんな日に遅刻ギリギリ
なのだからきっと碌な席ではないだろう。
葉琉はどうでもいいと思い教室に入った。
・・・・・・やっぱり・・・
案の条席は1番前の真ん中だった。
葉琉は残り物の席に座った。
「よ!葉琉、遅かったな!」
クラスメイトで幼なじみの国原 飛鳥がニヤニヤと不気味な笑みを浮かべながら近づいてきた。
実に気味が悪い。
「なっ、何だよ・・・」
「葉琉〜、俺たち幼なじみだよなぁ。」
「・・・・あぁ、それがどうした?」
「あのさぁ、昨日返されたテスト何点だった?」
「はぁ?どうしてそんなこと聞くんだ?・・・・・もしかしてお前点数悪かったのか!?」
その瞬間、飛鳥の顔が引きつった。
「ははぁん、図星か。まっそんな事だろうとは思ったけどさ!」
すると、急に飛鳥が捨てられた子犬の様な目で葉琉を見つめてきた。
「・・・・・・・・・・・・・そんな目で見つめても補習には付き合わねぇぞ!」
「そんなぁ、いいじゃんかぁ。葉琉だって欠点くらい取ってんだろう?」
「あのなぁ、俺をお前と一緒にしないでくれる?」
葉琉はヤレヤレという感じで、鞄の中から昨日返されたテスト用紙を机の上に並べた。
「・・・・・・99・・98・97・96,95・98・96・99・100点!!!??
どうやったらこんな点数取れるんだよ!!」
飛鳥は妖怪でも見るような目で葉琉をみながら、ふてくされている。全く、こいつは。
「あぁあ、なんで葉琉だけこんなに頭がいいんだか!」
またそれか。いつもいつもテストが返ってきたらこれだ。
葉琉の成績は毎回1位、飛鳥は・・・・・まあ、そこそこといったところの位置にいる。
ちなみに葉琉は全国模試1位の成績を持っている。
葉琉は飛鳥の真似をするように、
「あぁあ、なんで飛鳥だけバカなんだろうな!」
それを聞いた飛鳥は、少し涙目になっていた。
「そんな目をしても補習には付き合わないからな!」
「葉琉ちゃん誰と付き合うの?」
クラスの男どもがニヤニヤしながら近づいて来る。葉琉は女性のような顔立ちなのでみんなから
“葉琉ちゃん”と呼ばれている。葉琉は自分のこの顔立ちがコンプレックスなのだ。
全くどいつもこいつも人の気も知らないで次から次へと。
葉琉はため息をつき、うるさい男どもを全員無視して、この場を立ち去ろうとした。
「はるちゃんどこいくの〜?」
「うるせぇ!お前らがいない所に行くんだよ!」
「葉琉、言葉使いには気を付けなさい!」
飛鳥が葉琉に母親が女の子に向かって注意するような口調で注意してきた。
はぁ?飛鳥まで何言ってんの?それじゃあまるで俺が女なのに男みたいにしてるみたいじゃん!
だから嫌なんだよ!この顔が!
「あぁあ、せっかく補習付き合ってやろうかと思ったのに!もう、付き合ってあげないからな!」
そう言い捨てると、葉琉は教室を出て行った。
「いじけるとまた一段とかわいいよなぁvv!」
「・・・・どうしてくれるんだよ・・・・・」
「え??」
「どうしてくれるんだよ!葉琉が怒って行っちまったじゃねえかよ!あぁあ、葉琉ぅ!待ってくれよ〜!」
飛鳥もそういい捨てて教室を飛び出した。二人が飛び出して行った後の教室はシーンと静まり返っていた。
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