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         今日、目覚めて夢を覚えていました。

昨日の続きでした。

今日の訪問者は、おとなしくなった二組の両親――私のところと和のところ――がやってきました。

他愛のないおしゃべりを一時間ぐらいして二組の両親は帰りました。

その後、旦那さんが私の頼んでいた物を持って来ました。

あの青い日記帳です。

昨日の続き、書きます。なんだか、夢を見たせいか、使命感に燃えちゃってます(笑)



和の日記を開いて、目に映った文字は、私の知っている和の言葉ではありませんでした。

そこに書かれていた言葉たちは、全て和の嫌う言葉ばかりでした。

“あのやぶ医者のせいで・・・”

人のせいにする言葉は、和がとても悲しい言葉だと呟いてた。

“どうか、僕に命を。大切な物を失ってもいい・・・”

大切だと思える何かを持っていることが一番だと、誇らしげに言っていた。

“もう、死にたい・・・・”

一番、一番和が嫌い、憎んだ言葉。など・・・。

私の知る和なら、絶対に言わない、書かない言葉だった。

和の見せたかったものはこれだったの?

私に見せてくれた、教えてくれた、綺麗すぎる沢山モノは全て嘘だったって言いたいの?

そんな、苦しい思いで一杯でした。

そして、思いました。

和は、とても弱い子供だったのだと。

聖人でも、偉人でもなく、私と変わらないただの子供だと。

涙よりも、言葉よりも先に、そう思いました。

そう思いながらも、ページをめくり続けました。

相変わらず並ぶ言葉は、黒く、ドロドロとした文字でした。

私は、読み進めていくうちに、目を引く文を見つけました。

それは私たちが出会う一週間前の日記でした。

そこには私と和のご両親の知りたいと思う言葉が並べられていました。

私は無心でその言葉を追いました。

この時の私は、それはもう怖いものだったと母がよく冗談交じりに話すぐらいすごいものだったらしいです(笑)

まぁ、それほど一心に文字を追っていました。

書いてあった言葉は・・・丸写しします。

“僕は夢を見た。記憶に今も残っている。

「僕は生きたい。まだ死にたくない。僕は悪いことなんてシテナイハズナノニ・・・。」そう呟いていた。

いつもの闇で・・・。

その時、闇に光が満ちて、言葉が聞こえてきたんだ。

「生きたいか?」と。

僕はそれを聞いてすぐに「生きたい」と言葉を発した。

「生きたい。なんでもする。沢山の大切なものを失ってもいい。生かせてくれ。」

傍から訊けば、痛々しい声だっただろうなぁ。

声は「生きたければ、会いなさい。貴方の穴を埋める魂に。」そこで僕は目を覚ました。

これはチャンスなんだ。

目覚めた時も思ったけど、今この日記に再度夢の事を書いてもっと強くチャンスだと思っている。

いや、これは確信だ。

だから僕は明日会いに行こうと思う。

何となく会えばいい子が分かる。

分からないことだらけだが、僕は生きたい。生きたいんだ。

大切なものなんて命。

それ以外なら何でも捨てる。どんな酷いことをしても・・・。生きるだけ。”

私の知りたかったこと、そして和のご両親の知りたかったことの一部。

どうして、いきなり見ず知らずの女の子に会いに行ったのか・・・。

こういう事だった。

読み終わった後複雑で、なんだか一人にされた気持ちでした。

 

私と出会う切っ掛けは和の生への執着心、

そして和の都合のいい夢。

醜いといえば醜い。

全然ハッピーな形でないし、ロマンチックでもない出会うきっかけ。

むしろ、人間の醜い部分ばっかりが集まって、なんだか酷い出会うきっかけ。

夢なんて、あまりに都合がよすぎて、受験に受かるように神頼みして、落ちたらそのせいだというような、

あまりに自分勝手、そして悲しすぎる・・・。

しかし、私にはそれが許せたし、理解もできた。

だって、少なからずとも私は生への執着心、思いに関しては同じ思いをしたから。

ただ私はすぐにあきらめちゃったんですけどね。

だから、酷いとは思えない。

むしろ、その執着心、そして都合のいい夢には感謝している。

どんな理由でも、どんな思いからでも、出会えて、作った思い出は私にとって何よりも大切だったから。

和の心がどうであれ私にとっては幸せだったから。

綺麗事だけど、素直な気持ち。

けど、けど、やっぱり痛い。和、なんでこんな汚いところを見せるの?あんた馬鹿だよ。

手紙でちょこっと書いて・・・あの優しい和の言葉で書いてくれたらこんなに痛い思いしないのに!

和これは私に対する最後の嫌味!答えて、答えてよ!

私は一時そのページを開いたまま悲痛な思いで、自問自答、和への罵詈雑言、

そして、分からない痛みに耐えてながら、心でそんなことを言っていたような気がします。

もっと、口がわるかったかも・・・。

は、はぁー暗すぎ・・・。茶々入れる隙さえ見当たらない・・・。

このままバッドエンド突入か!

次回・・・予告の題名って思いつかない(笑)

昼の青い空をバックに、青い日記のページをめくっては閉じ、

閉じてはめくるという意味不明なことを繰り返している今日この頃です。

予定日まで二十三日です




  お話  ほーむ