〜1〜

やさしく吹く風、それと踊るように舞う花びらたち。

その花びらは私の元でちょっとだけ休む。

髪や、手や、服に。そして、また踊りに戻っていく。

私は休みに来る花びらをうれしく迎え、

また踊りへ戻っていく花びらを寂しく見送る。

そんな花びらの舞う中に私は立っている。風の音や、花びらのこすれあう

音以外は聞こえない。なんだか静かでどこか幻想的だと思う。

「パシャ」っと機械音がした。その音のせいで静かで幻想的な世界は崩れていった。

美季はむっとして、少し離れた所にいる男の子を睨んだ。

男の子はニコニコの笑顔でカメラを持っている。とっても満足そうな笑顔だ。

美季はその男の子にむかって

「なんで今撮るの!」と叫んだ。そうすると、男の子は

「何で今撮ったらいけないんだよ?そもそも写真を撮ってくれって言ったのは

美季じゃないか。」と言って意味ありげに微笑んだ。美季は、怒った口調で、

「確かに私は和に写真を撮ってくれっていったけど、今とは言ってないもん。」と言うと、

「別にいつ撮ったっていいじゃないか。それに、久しぶり美季がほほえんだん

だから記念に撮っただけだよ。」とほほえんでいった。

あいつ、私がほほえんでるところを見られるの嫌いだと知っててやりやがったなぁ。

と怒りに燃えている私をまた写真にとった。美季は顔を真っ赤にして、和を睨み付けたが、

和は、きにしてないのか気づいてないのか・・・まだシャッターをきっている。

もー怒った。私は和めがけて走った。そんな私を見て和はやっと危機を感じたらしく

慌てて写真を撮るのをやめた。しかし、今更やめても遅いぞ和!

私はスピードを緩めることなく和めがけて突っ込んだ。

“どす”と鈍い音がした。和が無様に倒れた音だ。

和は反射神経が鈍い。そのため美季が突っ込んでくると分かっていて

もよけられなかったのだ。

ふ、思い知ったか、和。私の嫌がることをするからこうなるんだぞ。

と、美季は皮肉をこめて心の中で笑っていた。

「和すっごくかっこわるいよー」美季は自分なりに明るい声でいった。

「あはははは、美季怖いよ〜」和もとても明るく笑った。

「怖いって思うならすぐに写真撮るのやめろよ」

「いいじゃないか。最近よく笑うようになったから、それをとっただけだよ。」

と、弱々しく笑った。

も〜、そりゃー感情表現の仕方を忘れかけた病院生活の私と、和と初めて出会って、

死ぬ準備手伝って、っていったころの私を比べれば大分笑うようにはなったけど・・・と、

美季が考えてるとこに和が声をかけてきた。

「っと、考え事してる途中でごめんけど、起こしてもらえる?腰うったみたいで痛くって。」

とほほえみながら情けない声でいった。

私は和のほほえみに弱い。このほほえみをみるだけで、怒りも悲しみも忘れられる。

美季は仕方ないなぁという顔をして、手を貸してやった。

「こんな時間がもっと欲しいね。」私は和に囁いた。もちろん心の中でね。

だって、こんなこと和に言うと怒られるもん。そう、泣きながら怒るもんね。

私の恩人にそんな顔してほしくないから、言わないよ・・・言わないつもりよ。

             


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