〜11〜

今日の天気は、晴天。

桜もほころびかけて、目にも鮮やかです。

私は、日記を書いている途中で陣痛が始まりました。

いやぁーなんだか痛いとは思っていたんですけど、まさか陣痛とは(笑)

子供は、一人だけ保育器に入っています。

やはり、片方が小さかったのです。

晃ちゃんも、看護師さんも誰も何も言わないけど、今日があの子の峠みたいです。

私の隣でねむっている私の子が、とても不安げに泣いているからです。

理屈抜きにそう感じられます。

この子が生まれた時、今私の隣にいる子が先に生まれました。

看護師さんのお話では、この子は生まれてすぐには泣かず、私と少し離れてから泣き出したそうです。

そして、離れるごとに泣き声は大きくなったそうです。

看護師さんは、お母さんっこですねと、連呼していました。

もう一人の子は泣き声を上げてはくれませんでした。

看護師さんやお医者さんが慌しく動き出しました。

痛く、苦しい時間。

それを破ったのは、もう一つの産声。

その後、分娩室を出た後私は気絶をしてしまいました。

そして、夢を見ました。

それは、この前の日記の最初に書いたあの夢でした。

「死んで、生まれ変わって、魂が同じ、顔も、思考も同じ。

だけど、きっとその人は前の人とはまったく違う・・・と思う。

僕と美季は半分ずつ魂を分けて、生きる。

そして、いつか生んでください。君のもっとも大切にする人との子供を。

僕はきっと生まれるから。

だけど、その子は僕ではないよ」と。

今なら思い出せる。

私の病気が進行して、集中治療室に入る前、遠のく意識の中でその言葉をはっきりと聞いていました。

あの時は意味がわかんなくて、すっかり忘れていました。

和は分かっていたんだね。

だから、和の夢をよくみたのかな?

この言葉を思い出して、気付くことに・・・。

和からのお祝いなのかもね。

そんなことを思っていると、晃ちゃんが慌しく入ってきました。

「美季!もう一人の子は無事だよ!!」

目に涙を溜めて私に抱きついて言いました。

その声を聞いて、私の隣の子はぴたりと泣き止み、スースーと寝息を立てて寝てしまいました。

とても、愛らしかったです。

晃ちゃんは私から離れて、今度は何が恐ろしいのかすごく怖い顔をしていました。

私はなんだろうと首をかしげると、

「美季・・・どうしよう!みんな子供の名前について、すごいことになってるよ!

もう名前は決めてあるって言いにくいし、

言ったら八つ裂きにされそうで・・・って美季!

何が可笑しんだよ!!

こっちは本当にこわいんだからな!」

なおも笑う私に晃ちゃんはふてくされてしまいました。

確かに、想像できることね(笑)

「アハハ、大丈夫だよ。

たこ殴りにされても、八つ裂きにはされないから。」

と私が笑顔で言うと、晃ちゃんは顔をこわばらせました。

本当にからかいやすい(笑)

こんな風な無駄話をして数分、晃ちゃんは隣の子の手を優しく撫でながら、

「やっぱり君の子だね。夢叶(ゆめと)も愛華(あいか)も君によく似ている。そして、この二人を見ていると――」

この先何をいうか分かった。

和が気づかせてくれた。

そう、言わなきゃ。気づかせてくれたことを。

だから晃ちゃんの言葉を遮り

「夢叶も愛華も、貴方の子供よ。誰の子でもなく、晃人の子よ」と、

愛華の手を撫でる晃ちゃんの手に触れながら言いました。

晃ちゃんは、驚いた顔をしました。

数秒後、顔を今まで見たことのない優しさと、喜びで顔を満たしながら

「いや、美季と僕の子だ」と言いました。



これから、四人で歩んでいく道は、今までとは少し違う気持ちで、

夢と愛を持ちながら進んで行けるのかもしれないと、優しい春の中、優しいひと時の中で思う今日この頃でした。



ちなみにこの後は、名前について病室が酷い嵐に見舞われたのは言うまでもありません。

終わり

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このシリーズをお読みいただきありがとう御座いました。
感謝感激雨あられですw

上手な文ではないですけど、どうにかこうにか書き上げました。
ご感想などいただけるとうれしいです。

        


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